隅角や視神経の病気

緑内障

りょくないしょう / glaucoma

目で受け取った情報を脳へ伝える「視神経」が傷み、見える範囲(視野)が少しずつ欠けていく病気です。初期は自覚症状がほとんどなく、気づかないうちに進むことが少なくありません。欠けた視野は元には戻らないため、早期発見と治療の継続がとても大切です。

図 1

視野の欠け方(イメージ)

正常な景色と、周辺が暗く欠けて中心だけが見える緑内障進行時の見え方の対比。
進行すると、見える範囲の周辺から欠けていくことがあります。初期にはこうした自覚はほとんどなく、この図は進んだ状態のイメージです。

こんな症状に注意

  • 初期は自覚症状がほとんどありません(ここが緑内障の要注意点です)
  • 進行すると、見える範囲の一部がぼんやり欠ける(見えない場所ができる)
  • ものにぶつかりやすい、階段や段差が見づらい
  • (急性の場合)突然の強い目の痛み・頭痛・吐き気・かすみ・充血 ― これは緊急です

ふだんは両目で見ているため、片方の視野が欠けても、もう片方が補ってなかなか気づきません。健診などで指摘されて初めてわかることも多い病気です。健診で眼底検査を受けて、早期発見することが大切です。

どんな病気?

目の中は「房水(ぼうすい)」という液体で一定の圧(眼圧)が保たれています。「房水」の出口の隅角が詰まりやすいことなどが原因で眼圧が高くなると、視神経が傷み、その神経が担当していた部分の視野が欠けていきます。視神経は目の奥(下図)から脳へつながっています。

図 2

隅角と視神経の位置

眼球の水平断面。房水の出口である隅角と、目の奥から脳へ伸びる視神経の位置を示す。
視神経は目の奥から出て脳へつながります。緑内障ではこの視神経が少しずつ傷みます。

知っておきたいこと

  • 眼圧が高い人だけの病気ではありません。日本人では眼圧が正常範囲でも起こる緑内障(正常眼圧緑内障)が多いことが知られています。
  • 加齢、家族に緑内障の人がいること、強い近視などが関係するとされます。
  • まれに房水の出口が急にふさがり、急激に眼圧が上がる(急性緑内障発作)タイプがあります。これは突然の激しい症状が出る緊急の状態です。

隅角のようすによる分かれ方

ひと口に緑内障といっても、房水の出口である隅角がどうなっているかで大きく2つに分かれます。進み方も、治療の考え方も変わってきます。

図 3

隅角のようす

前眼部の断面で隅角のようすを比べた4つの図。正常では隅角が広く開き、房水は毛様体でつくられて後房へ出たあと、瞳孔を通って前房へまわり、隅角にある線維柱帯からシュレム管を経て強膜の中へ流れ出る。開放隅角緑内障では隅角は開いているが、出口の線維柱帯が目づまりし、強膜へ出ていく流れが減る。閉塞隅角緑内障では虹彩が前へふくらんで隅角が狭くなり、房水が流れにくくなる。急性緑内障発作では瞳孔が開いたままになり、隅角がほぼふさがって、房水が出ていけなくなり目の中にたまる。
房水(紺色の矢印)は毛様体でつくられ、瞳孔を通って前房へ出たあと、隅角にある線維柱帯からシュレム管を通って目の外へ流れ出ます。点線の矢印は房水が流れにくくなっていることを示します。急性緑内障発作では出口が絶たれ、房水が目の中にたまります。
正常
隅角が広く開いていて、房水は線維柱帯からスムーズに流れ出ていきます。つくられる量と出ていく量がつり合って、眼圧が一定に保たれます。
①開放隅角緑内障
隅角は開いたままですが、出口の線維柱帯が少しずつ目づまりして房水が流れにくくなります。日本人の緑内障で最も多いタイプで、ゆっくり進み、初期の自覚症状はほとんどありません。眼圧が正常範囲でも視神経が傷む正常眼圧緑内障も、隅角はこの状態です。
②閉塞隅角緑内障
虹彩と水晶体の間がせまくなって房水がせき止められ(瞳孔ブロック)、押された虹彩が前へふくらんで隅角が狭くなります。遠視の方や、加齢で水晶体が厚くなった方に起こりやすいタイプです。
③急性緑内障発作
狭くなっていた隅角が急に完全にふさがり、房水の出口が絶たれて眼圧が一気に上がります。このとき瞳孔は開いたままになり、虹彩の根もとが隅角をふさいでしまいます。突然の強い目の痛み・頭痛・吐き気・かすみ・充血が出ます。短時間で視神経が傷むため、ただちに眼科を受診してください。

眼圧が上がると視神経はどうなる?

房水の出口がうまく働かなくなると眼圧が上がります。目の中の圧は全方向にかかりますが、いちばん弱いのが、視神経が目の外へ出ていく視神経乳頭のところです。ここが圧に押されて少しずつへこみ(陥凹)、へこみのふちで神経の線維が押しつぶされて切れてしまいます。

図 4

眼圧と視神経乳頭のへこみ(陥凹)

眼球の断面図。眼球の内側から外に向かう4本の赤い矢印で眼圧を示し、目の奥で視神経が出ていくところ(視神経乳頭)を赤い丸で示している。その拡大図では、視神経乳頭の中央が深くへこみ(陥凹)、へこみのふちで神経の線維が押しつぶされて切れているようすを描いている。
眼圧が上がると視神経乳頭がへこみ(陥凹)、へこみのふちで神経の線維が切れてしまいます。切れた線維が担当していた場所の視野が欠け、いちど切れた線維は元には戻りません。

検査・診断

  • 眼圧検査:目の硬さ(圧)を測ります。
  • 眼底検査:視神経の出口(視神経乳頭)の傷み方を観察します。
  • 視野検査:見える範囲が欠けていないかを詳しく調べます。
  • OCT(光干渉断層計):視神経の神経線維の厚みを測り、早い段階の変化をとらえます。
  • 隅角(ぐうかく)検査:房水の出口のタイプを確認します。

治療

治療の目的は、今ある見え方を守り、進行をできるだけ止める・遅らせることです。すでに欠けてしまった視野を元に戻すことはできないため、早く始めて続けることが重要です。現在確実な方法は眼圧を下げることで、一人ひとりの状態に応じて「これ以上進みにくい」と考えられる目標の眼圧(目標眼圧)を目安に、治療を調整していきます。多くは点眼薬から始め、必要に応じてレーザーや手術を組み合わせます。

点眼薬による治療(多くはここから)

どんな薬か
房水(目の中の液体)の産生をおさえるタイプと、流れ出るのを促すタイプがあります。1日1回の点眼で効果が続くものが最初に選ばれることが多く、効果が十分でないときは種類を変えたり、複数を組み合わせたりします。何本かの成分を1本にまとめた配合薬もあります。
正しいさし方(効果を活かすために)
1回に必要なのは1滴です。さした後は、まぶたを静かに閉じて目頭(めがしら)を軽く押さえると、薬が全身に流れて起こる副作用を減らし、目にとどまりやすくなります。2種類以上を使うときは、できれば数分以上あけてさします。
知っておきたい副作用
目の充血・かゆみ、まつげが濃く長くなる、目のまわりの色素沈着、種類によっては脈拍や呼吸への影響などが知られています。気になる症状があっても自己判断で中止せず、医師・薬剤師に相談してください。合わない場合は別の薬に変更できます。
続けることが何より大切
自覚症状がなくても毎日続けることで、将来の見え方を守れます。さし忘れを防ぐため、歯みがきなど毎日の習慣と組み合わせる、記録をつける、といった工夫も有効です。

レーザー治療

房水の流れを促すレーザー
房水の出口(線維柱帯)にレーザーを当てて、流れ出やすくします。外来で短時間に行え、点眼の負担を減らす目的や、点眼と併用して行われることがあります。
出口が狭いタイプへのレーザー
房水の出口が狭い・閉じやすい目では、虹彩にレーザーで小さな通り道を作る(虹彩切開)などの処置を行い、急な眼圧上昇(急性緑内障発作)を防ぎます。

手術

いつ考えるか
点眼やレーザーで眼圧が十分に下がらないときや、治療していても進行が続くときに検討します。
おもな手術
房水を目の外へ逃がす新しい流れ道をつくる手術や、詰まった出口を広げる・切り開く手術があります。目への負担が比較的少ない手術(低侵襲緑内障手術)は、白内障手術と同時に行われることもあります。状態によっては、細いチューブを使う手術などが選ばれます。
手術後について
手術は眼圧を「下げる」ためのもので、すでに欠けた視野が戻るわけではありません。手術後も、眼圧や見え方を確認する定期的な管理を継続します。

急性緑内障発作の治療は緊急です

房水の出口が急にふさがって眼圧が急上昇するタイプ(急性緑内障発作)では、点滴・点眼・内服ですぐに眼圧を下げ、レーザーや手術を行います。放置すると視神経が短時間で大きく傷むことがあります。突然の強い目の痛み・頭痛・吐き気・かすみ・充血があれば、ただちに受診してください。

「症状がない=治った」ではありません

緑内障の治療は、症状を消すためではなく、将来の見え方を守るために行います。点眼で症状が変わらなくても、勝手にやめると気づかないうちに進行することがあります。中断せず、定期的な検査を続けましょう。

日常生活・予防

  • 点眼を毎日続ける:決められた回数・タイミングを守りましょう。さし忘れを防ぐ工夫も有効です。
  • 定期的な検査を受ける:眼圧や視野の変化を確認し、治療を調整します。
  • 健診の指摘を放置しない:「眼圧が高い」「視神経が気になる」と言われたら眼科を受診しましょう。
  • 家族歴のある方は早めの検診を:血縁に緑内障の方がいる場合はリスクが高めです。
  • 禁煙や生活習慣の見直しも、目の健康に役立ちます。

早めに眼科へ

次のときはすぐに受診してください

  • 突然の強い目の痛み・頭痛・吐き気・目のかすみ・充血(急性緑内障発作のことがあり、緊急です)
  • 見える範囲が欠けている、ものにぶつかりやすいと感じる
  • 健康診断や人間ドックで、眼圧や視神経について指摘された

緑内障は早く見つけて治療を続けるほど、見え方を保ちやすい病気です。気になることがあれば眼科でご相談ください。

最終更新
2026年8月

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