角膜の病気と手術
角膜移植が必要な病気
かくまくいしょく / keratoplasty
角膜は目のいちばん外側にある透明な部分です。ここが濁ったり形が変わったりして、眼鏡やコンタクトレンズでは見え方が回復しないとき、提供された角膜(ドナー角膜)と入れ替える角膜移植を検討します。近年は、傷んだ層だけを入れ替える「パーツ移植」が広く行われています。
図 1
角膜移植の前と後
こんな症状に注意
- 強いかすみ:目の表面が曇りガラスのようになる
- まぶしさが強い、光がにじむ
- 眼鏡やコンタクトでも視力が出ない(強い乱視)
- 目の痛み(角膜のむくみで水ぶくれができて破れたとき)
- 朝に見えにくく、日中に少し良くなる(角膜のむくみによる変化)
どんなときに移植が必要?
角膜は5つの層からなり、透明さを保つにはいちばん内側の内皮細胞が重要です。内皮細胞は増えないため、減ってしまうと角膜がむくんで濁ります。
移植が検討される主な病気
- 水疱性角膜症
- 角膜内皮細胞が減り、角膜がむくんで濁る状態です。白内障などの手術のあとや、レーザー虹彩切開のあと、外傷などをきっかけに起こります。痛みをともなうこともあります。
- 円錐角膜
- 角膜が薄くなり前に突出して円錐状に変形する病気です。若い年代に多く、強い乱視のため眼鏡での矯正が難しくなります。進行例では移植の対象になります。
- 角膜混濁(瘢痕)
- 感染性角膜炎のあとや、外傷・化学薬品や熱による傷のあとに、角膜が白く濁って残った状態です。
- 角膜ジストロフィ
- 遺伝的な要因で角膜に濁りが生じる病気の総称です(顆粒状・格子状角膜ジストロフィ、フックス角膜内皮ジストロフィなど)。
- 重い角膜潰瘍・穿孔
- 角膜に穴があいた、あるいはあきそうな状態では、目を保つために緊急で移植を行うことがあります。
検査・診断
- 視力・屈折検査:眼鏡やハードコンタクトでどこまで見えるかを確認します。
- 細隙灯顕微鏡検査:濁りの位置や深さ、むくみの程度を観察します。
- 角膜内皮細胞検査:内皮細胞の数と形を調べます。移植の必要性を判断する重要な検査です。
- 角膜形状解析(トポグラフィー):円錐角膜など、形の変化を詳しく調べます。
- 前眼部OCT・角膜厚測定:角膜の各層の状態と厚みを確認します。
治療
角膜のどの層が傷んでいるかによって、入れ替える範囲を選びます。近年は、傷んだ層だけを入れ替える「パーツ移植」が広く行われています。
角膜移植の種類
- 全層角膜移植(PKP)
- 角膜のすべての層を円形に切り抜いて入れ替え、細い糸で縫合します。濁りが深い場合や広範囲の場合に選ばれます。視力が安定するまで時間がかかり、乱視が残ることがあります。
- 角膜内皮移植(DSAEK / DMEK)
- 傷んだ内皮の層だけを入れ替えます。傷口が小さく、回復が早いのが大きな利点です。水疱性角膜症やフックス角膜内皮ジストロフィで広く行われています。術後しばらくあお向けの姿勢を保ち、目の中の空気で移植片を押さえます。
- 深層層状角膜移植(DALK)
- 内皮を残してその手前の層だけを入れ替えます。自分の内皮を残せるため、拒絶反応の危険が低いのが利点です。円錐角膜や、内皮が保たれている混濁に適しています。
- 層状角膜移植(LKP)
- 角膜の表層の混濁の治療や、角膜穿孔の治療の際に、層状の角膜を移植して治療をします。
提供角膜(ドナー)について
移植に使う角膜は、アイバンクを通じて、亡くなった方やご家族の善意によって提供されたものです。待機が必要になることがあります。
手術後について
- 拒絶反応を防ぐためのステロイド点眼を、長期間(年単位になることもあります)続けます。自己判断で中止しないでください。
- 定期的な通院が欠かせません。全層移植では、縫合した糸を時間をかけて少しずつ抜いていきます。
- 眼圧上昇、感染、乱視などが起こることがあり、経過に応じて対応します。
- 視力の回復には時間がかかります(内皮移植では比較的早く、全層移植では年単位のこともあります)。
- 目を打撲しないように気を付けてください。移植した角膜が外れてしまうことがあります。
拒絶反応のサインを知っておいてください
充血・目の痛み・急なかすみ・まぶしさは拒絶反応のサインのことがあります。早く治療を始めれば移植した角膜を守れる可能性が高くなります。これらの症状が出たら、すぐに受診してください。
早めに眼科へ
こんなときは受診を
- かすみやまぶしさが強く、眼鏡でも見えにくい
- 角膜の病気を指摘されたことがあり、見え方が変わってきた
- 移植を受けた方:充血・痛み・急にかすみが強くなった(拒絶反応や感染症の可能性)