目の表面の病気と手術

羊膜移植が必要な病気

ようまくいしょく / amniotic membrane transplantation

出産のときの胎盤の一部である「羊膜」を、目の表面の治りにくい傷を覆うために使う手術です。羊膜には炎症や傷あとを抑え、表面の再生を助ける働きがあり、通常の点眼では治らない目の表面の病気に用いられます。

図 1

結膜腫瘍の切除と羊膜による再建

白目(結膜)に腫瘍がある手術前と、腫瘍を切除した部分に羊膜を移植して縫合した状態の対比。
腫瘍などを切除したあとにできた結膜の欠損を、羊膜で覆って再建します。羊膜は細い糸で縫いとめて固定します。透明な膜のため見た目への影響は少なく、その上に自分の細胞が伸びてきて表面が作り直されます。

どんなときに必要?

目の表面は、涙と、角膜・結膜の上皮という薄い細胞の層で守られています。この上皮がはがれたまま再生しないと、痛みが続き、感染や角膜に穴があく危険も高まります。羊膜は、そうした部分を覆って再生の「足場」となり、炎症をやわらげます。

対象となる主な病気・状態

  • 腫瘍切除後の結膜の再建:切除によってできた欠損を覆い、表面を作り直します。
  • 翼状片の手術で、切除後の大きな欠損を覆う場合(とくに再発翼状片)。
  • 難治性角膜上皮欠損:点眼や保護用コンタクトでも治らない、角膜表面の欠損。
  • 角膜潰瘍・小さな穿孔:角膜が薄くなった、穴があきそう・あいた状態。
  • 化学外傷・熱傷の急性期:薬品や熱で目の表面が広く傷んだ場合。早い時期の羊膜移植が、その後の瘢痕を減らすことが期待されます。
  • スティーブンス・ジョンソン症候群、眼類天疱瘡など、強い炎症で表面が瘢痕化する病気。
  • 角膜輪部(幹細胞のある部分)の機能が失われた状態。

羊膜の特徴

  • 炎症や新生血管、瘢痕(傷あと)を抑える成分を含みます。
  • 透明で、移植しても見え方をさまたげにくい素材です。
  • 拒絶反応が起こりにくい組織とされています。
  • 出産時に提供された胎盤から、感染症の検査を行ったうえで保存・使用されます。

検査・診断

  • 細隙灯顕微鏡検査・フルオレセイン染色:表面の傷の範囲と深さを確認します。
  • 涙液の検査:涙の量や質を調べます(ドライアイが背景にあることがあります)。
  • 感染の有無の確認:培養検査などで感染がないかを調べます。
  • まぶた・まつげの状態:内反やまつげの向きが傷の原因になっていないかを確認します。

治療

まず原因を取り除く治療を行い、それでも治らない場合に羊膜移植を検討します。

羊膜移植の前に行う治療

  • 人工涙液・ヒアルロン酸などの点眼、眼軟膏
  • 治療用(保護用)ソフトコンタクトレンズ
  • 感染があれば抗菌薬、炎症が強ければ抗炎症薬
  • 涙点プラグ(涙をためる)、まぶたやまつげの異常の治療

羊膜移植のしかた

足場にする方法(グラフト)
欠損した部分に羊膜を敷き、その上に自分の細胞が伸びてくる足場として使います。
覆う方法(カバー)
羊膜を「ばんそうこう」のように表面に貼って保護し、炎症を抑えます。役目を終えると溶けたり取り除いたりします。
固定のしかた
細い糸で縫いつけるか、組織用の接着剤で固定します。手術のあとは、保護用のコンタクトレンズを装用することがあります。

手術後について

  • 抗菌薬・抗炎症薬の点眼を続け、表面が再生していく経過を診ていきます。
  • 原因となっている病気の治療を並行して行うことが重要です(ドライアイ、まぶたの異常、全身の病気など)。
  • 症状が重い場合には、羊膜移植だけでは十分でなく、角膜移植や輪部移植などを追加で検討することがあります。
最終更新
2026年8月

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